いしかわゆきさんの『書く習慣』を読んだ。
「書こうとするといつも止まる」がずっと続いていて、その理由がなんとなくわかった気がした。
読者を考えると、書く気が失せる
本のなかで「どんな人が読むかを考えて書くことが大切」と言われがち、という話が出てくる。
でも著者はそこでこう言う。「そこまで考えているうちに書く気が失せるわ!めんどくせぇ!!!!」
これを読んで、ちょっと笑ったが、同感ではあった。
書こうとするたびに、誰に向けてとか、何を伝えたいかとか、構成はどうするとか、そういうことを考え始めて、気づいたらもう書く気がなくなっている。準備だけして終わる。
この本はその「事前最適化」を最初から否定してくれる。まず書け、という話だけど、怒鳴りつけるんじゃなくて「そりゃそうなるよね」って共感しながら言ってくれる。
「考察が浅い」が、一番邪魔だった
もうひとつ刺さったのが、「書き手が見えてこない」という話。
よくある文章の問題として著者が挙げていたのが「それっぽいことが書いてあるけど、書き手が見えてこない」という状態。
これを読んで、自分がなぜ書けないかを言語化された気がした。
書けない理由は「文章が下手だから」じゃなかった。「自分の感想や考察が浅い気がして、それを出すのが恥ずかしい」からだった。深みのある分析でもない、独創的な視点でもない、ただの感想——それを出していいのか、みたいなブレーキがずっとかかっていた。
でもこの本は「今のあなたが体験したことがそのまま価値だ」と繰り返す。
体験したことのない誰かにとっては、自分が無益だと思っていることも有益になる。これを読んだとき、ちょっとだけハードルが下がった。
著者自身がそれを証明していた
面白いと思ったのが、この本自体がそのことの実例になっているところ。
科学的な根拠や学術的な調査が出てくるわけじゃなくて、著者が実際に体験したことや感じたことだけで書かれている。だから平易で読みやすいし、「そうそう」ってなる頻度が高い。
「体験こそが価値」を本の内容として語りながら、本の形式でも体現している。内容と形式がちゃんと一致している。そういうところも好ましい。
気持ちが動いたときに書く、ただそれだけ
本のなかで一番シンプルだったのが、このルール。
「今、気持ちが動いたな」と感じたら、その出来事と思いをメモするだけ。
反対に言えば、感情が動いていない状態でいくら頭を使っても、何もインプットされていない。そういう話もあった。
書くための素材は、感情の動いた瞬間に溜まっていく。その瞬間を逃さない、という意識だけ持っておけばいい。難しいことは何もなくて、ただそれだけ。
この本を読んでから、なんとなく、感情が動いたときにメモするようになった。続くかはわからない。でも前よりは止まらなくなった気がしている。
読んだ本: いしかわゆき『書く習慣 自分と人生が変わるいちばん大切な文章力』